コラム

COLUMN幹細胞治療による美容効果について

病気などの症状を抑える「対症療法」ではなく、体の損傷した組織を回復させるといった方法によってこれまでは完治が難しいとされていた症状の治療を可能にしている事から一層の研究が進められている再生医療。
再生医療は主に幹細胞とよばれる細胞を使用した幹細胞治療によって行われますが、幹細胞治療による高い治療効果は美容面でも非常に有用で、実際に治療として取り入れられるケースも増えてきました。
今回は幹細胞治療の美容効果を中心に詳しく解説いたします。

幹細胞治療が美容に効果を発揮する際の主要な3つの有効成分

幹細胞を利用した治療で美容効果が発揮される際には、主に3つの有効成分が働いています。

幹細胞

幹細胞治療で美容効果を発揮する一つ目の有効成分が「幹細胞」そのものです。
そもそも幹細胞とは、自己複製能といって細胞分裂によって自分自身のコピーを作り出す能力と、分化能といって特定の細胞に変化して働く事ができるという2つの能力を持った細胞の事です。

私たちの体には37兆個の細胞があるといわれていて、例えば皮膚の細胞や筋肉の細胞、血液の細胞など一つ一つが異なる性質をもっていますが、幹細胞は細胞分裂によって増殖しながらこうした役割のある特定の細胞に変化する事で、時間経過などによってダメージを受けた細胞の変わりを作り出して体の健康状態を維持する役割を持っています。

幹細胞治療の中でも、治療を受ける方自身の幹細胞を専用の施設で培養してから戻すという治療法では、幹細胞そのものを点滴などによって体内に取り込む事で傷ついた組織、ダメージを受けている組織の修復を促す事ができます。

損傷を受けた部分が修復されて代謝が回復すると、例えば全身でエネルギーが使われやすくなるためダイエット効果が期待できたり、疲れやすさなどを改善させる事ができます。
もちろん肌組織を作り出す細胞や髪を作り出す細胞などの損傷もケアするため、美しい肌や髪といった美容的なケア効果も期待できるでしょう。

サイトカイン、成長因子

幹細胞が培養されて増殖する際、細胞の周囲に放出される有効成分がサイトカインや成長因子と呼ばれるものです。
サイトカインにも様々な種類がありますが、サイトカインは特定の細胞と結びつく事で細胞の代謝や活動を促進するといった効果が期待できるもので、サイトカイン単体でも様々な治療に用いられています。
サイトカインの代表的な美容効果には下記のようなものがあります。

EGFによる表皮のターンオーバー促進

EGFとは表皮細胞成長因子とよばれるもので、表皮を作り出す細胞に結びつく事で新しい角質細胞の生成を促します。
表皮の細胞は基底層で新しい細胞が作られる事によって徐々に肌表面へと移動し、最終的に剥がれ落ちていくという約28日のターンオーバーで定期的に入れ替わる事で健康な状態を保っていますが、年を取ると体内でのEGF合成量などが減少していくためターンオーバー周期が長くなり、これが肌質の低下やシミなどのエイジングサインを引き起こす要因となっています。
EGFを直接取り込む事で肌細胞のターンオーバーを促進すると、シミやすり鉢状の毛穴といった肌トラブルを改善する事ができます。

FGFによる肌のハリ改善

FGFは線維芽細胞成長因子とよばれるものです。
線維芽細胞とは肌の「真皮層」と呼ばれる部分などに存在している細胞で、弾力のあるコラーゲンなどの組織を作り出す細胞。
FGFによって線維芽細胞が活性化すると、コラーゲンが豊富に作られるようになって真皮層の弾力が増加し、肌のハリ改善が期待できます。
真皮層がピンとはった状態になる事で、小じわや肌のたるみといったエイジングサインを解消に導く事ができます。

VEGF

血管内皮細胞成長因子と呼ばれるもので、文字通り血管を構成する細胞の代謝を促進します。
血管の細胞というと美容には遠い気がしますが、体内の細胞は血管から栄養の供給を受けているため、体の隅々までしっかりと強い血管(毛細血管)がいきわたって細胞に必要な栄養や酸素が受け渡る状態を作る事は、美容面でも非常に大きな意味があります。

また、例えば豊胸や目の下の窪みなどを解消するために脂肪注入の治療を行う場合、注入した脂肪細胞は毛細血管と接続される事で定着するため、VEGFが含まれた成分を同時に注入すると血管の新生が促進されて生着率が改善するといったような効果も期待できます。

エクソソーム

エクソソームは細胞間の情報伝達を担うといわれているもので、細胞がその活動によって作り出すタンパク質(サイトカイン)などの設計図であるmRNAや、細胞が代謝を行うために必要な材料などが含まれています。

エクソソームは細胞の中で作られ、小さなカプセルとして細胞の外に放出され、周囲の細胞に入り込む事でその効果が発揮されますが、このように周囲の細胞に影響を与える効果をパラクライン効果と呼びます。
エクソソームはあくまでも細胞間の情報伝達物質のため、どの細胞で作られたものかによっても細胞に与える影響の内容は異なりますが、若く代謝の活発な細胞から作られたエクソソームは、細胞の修復やテロメア(細胞の末端にある、細胞の分裂できる回数に左右されるといわれる部分)の延長といった効果が得られる事がわかっているなど、細胞レベルでの若返り効果が期待できます。

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幹細胞治療の方法による美容効果の違い

幹細胞治療は大きく分けて2つの治療方法があり、それぞれに期待できる効果には違いがあります。

幹細胞そのものを使用した治療

「幹細胞治療」としてイメージしやすい治療は幹細胞を体の外で培養して増やしてから、再度体内に戻すという方法ではないでしょうか。
再生医療としての研究が古くから進められている方法で、美容目的だけではなく白血病など従来の治療法では完治が難しかった傷病の回復を行える治療法として、一部では保険診療の適用にもなっています。

美容目的で行われる治療の場合、主に脂肪細胞から採取した幹細胞を治療に使用します。
脂肪細胞には間葉系幹細胞とよばれる、神経や筋肉など様々な細胞に分化する事ができる幹細胞があるため、これを培養して体内に戻す事で皮膚や髪、爪などの若返り効果が期待できます。

生まれた時は60億個あるといわれる幹細胞ですが、加齢と共に減少していき40歳には3億個ほどまで減少してしまう事が体の代謝機能が大幅に低下する要因の一つとも考えられていますが、培養された幹細胞を直接取り込む事で幹細胞の数を増やす事ができるので、全身の代謝が大きく改善されます。

幹細胞培養上清液を使用する治療

幹細胞を培養する際、以前は培養に使用していた液体は廃棄してしまっていたのですが、実はこの培養液中には細胞の活動に関わる様々な成分が含まれている事が分かり、こちらを利用した治療が培養上清液を使用するものです。

上清液とは上澄み液の事ですが、幹細胞培養上清液は、幹細胞を培養した後に幹細胞自体を取り除いた部分ですので、細胞自体は含まれていません。
そのため、治療を受ける本人以外から採取した幹細胞の培養によって作った薬剤でも拒絶反応などの心配はなく、すでに薬剤として販売されているものを点滴注射などで取り入れるだけの非常に手軽な治療である点がメリットとなっています。

また、美容目的で使用される幹細胞培養上清液は胎児と母親を結ぶ臍帯に含まれる「臍帯血」由来の幹細胞や、子どもの生え変わる歯である「乳歯歯髄」ゆらいの幹細胞が材料として使われているケースが多いのですが、これは若く活発な細胞を培養した時の方が、各種サイトカインやエクソソームといったより美容に効果的な成分が豊富に含まれるためです。

幹細胞そのものの数を増加させるものではないため、幹細胞の減少による代謝の低下を改善する効果や、ダメージを受けた組織の回復という点では幹細胞を直接培養して投与する治療法に及ばない可能性がありますが、一方で高い細胞の修復効果をもったエクソソームが豊富に含まれているため、ダメージを受けた細胞そのものの回復や、細胞の寿命ともいわれているテロメアの若返りといった効果が期待できる点で優れているといえます。

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幹細胞培養上清液は投与方法によっても効果が異なる

幹細胞を培養してから投与する場合は主に点滴で全身への投与を行う事で、幹細胞が損傷のある組織に集まって修復を行うという効果が期待できますが、幹細胞培養上清液の場合は点滴での治療だけではなく、美容面でのケアが気になる「小じわ」や毛髪の改善を目的とした局所投与などでも利用されます。

局所投与の方法や得られる美容効果には下記のようなものがあります。

水光注射などによるちりめんジワなどの美容治療

目元にできるちりめんジワは、加齢によって皮膚の代謝が低下し、表皮層のターンオーバー低下や真皮層のコラーゲン減少が原因です。
ちりめんジワが気になるような箇所に直接水光注射などで浅く幹細胞培養上清液を投与すると、薬剤が皮膚細胞の代謝を促して肌のハリを回復させ、効果的に治療を行う事ができます。

頭皮への注入による毛髪の改善

頭皮に注入を行う事で、毛髪の成長を行う細胞を修復して健康的な髪の毛が作られる環境を整えます。

脂肪注入の定着強化

脂肪注入による豊胸や目元の窪みなどに対する脂肪注入を行う際、脂肪細胞と一緒に幹細胞培養上清液を注入すると細胞の定着率を向上できると考えられます。

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美容目的の幹細胞治療なら城本クリニックにご相談ください

幹細胞による治療は安全性が高く術後のダウンタイムなども殆どないため、手軽に受けやすい治療です。
しかし、治療の効果をしっかりと発揮させるためには使用する薬剤の選び方や投与方法など適切なものを選択する必要があり、十分に効果を実感できる治療のためには医師の知識が必要不可欠です。
城本クリニックでは、長年再生医療分野の研究を行ってきた医師をはじめ、各種美容治療に精通した医師が揃っていますので、幹細胞治療だけではなく様々な治療法から、お悩みにあった最適な治療法をご提案する事が可能です。
幹細胞治療による美容効果は今後ますます注目されていくと考えられます。治療に興味をお持ちの方は、是非一度お気軽にご相談ください。

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本コラムの監修医師

1978/04:富山医科薬科大学医学部医学科入学
1984/03:富山医科薬科大学医学部医学科卒業
1984/06:大阪市立大学医学部付属病院研修医
1986/04:大阪市立大学大学院医学研究科外科系外科学専攻
1990/03:大阪市立大学大学院医学研究科外科系外科学修了
1990/04:田辺中央病院医長
1991/04:城本クリニック

医学博士 / 日本美容外科学会専門医
第105回日本美容外科学会 会長
城本クリニック総院長 森上和樹

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